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[第7回] セキュリティ対策 その3 ?センサー?
2016年1月18日
前回、各警戒線で共通する対策として「監視カメラ」があると説明しました。
今回は、「センサー」について具体的に説明します。
(8)センサー
ここで言う「センサー」には、様々なものがあり、現在使われている主なものを列挙します。
・開閉センサー(マグネットスイッチ):窓やドアなどの開閉を磁石で感知するセンサー
・ガラス破壊センサー:ガラスの破壊を検知するセンサー
・振動センサー:壁や天井などの振動を検知するセンサー
・空間センサー:人体から放射される遠赤外線を検知するセンサー
・赤外線センサー:赤外線が遮られることで侵入を検知するセンサー
・熱感知器:温度上昇で火災を検知する機器
・煙感知器:煙により火災を検知する機器
・ガス漏れ感知器:ガス漏れを検知する機器
これらのセンサー・感知器を、各警戒線に設置します。
少し余談になりますが、上記の各種センサーの進歩は、試行錯誤の連続でした。初期の振動センサーには、窓を叩いただけで感知するものがあったり、空間センサーには、小動物を感知したりFAXが動作しただけで発報する(警備業界では「誤報」と呼びます)ものもありました。発報のたびに警備会社は現場へ急行する必要がありますから、誤報の多さは警備会社の悩みのタネでした。
現在は、ガラスが破壊される際の振動(他の振動とは周波数が異なる)だけを感知出来るようなセンサーや、動きの速い小動物は検知しないように感度を調整出来るセンサーも開発されています。
では、上記の中でも代表的な「赤外線センサー」と「空間センサー」について説明します。
赤外線センサー
ベトナムでは、ほんの4,5年前まで、工場や建物の敷地の監視はマンパワーが主流でした。工業団地や大きな工場の敷地には、写真1のように警備員が監視するための「物見やぐら」が設置されていました。(今でも現役の「物見やぐら」は各地に存在します)
写真1
近年ではベトナムにおいても、先にご説明したように先進国で一般に普及している各種センサーが入手出来るようになっています。これらのセンサーを適切に活用するためには、設置する場所や設置する台数を工夫する必要があります。
敷地や建物の外周を守るために使用されるのは、赤外線センサーが一般的です。
写真2のような形をしており、これを敷地の大きさに合わせて複数台設置します。
写真2
センサーとセンサーの間は、下図のように目には見えない赤外線が張られおり、何者かが赤外線を遮ったら警報を鳴らすことが出来ます。
ただし、鳥や猫のような小動物が遮った場合や、雨や雪(ベトナムでは、ほぼあり得ませんが)などの自然現象でも警報が鳴ってしまうため、現地の環境に合わせて感度調整が必須になります。この部分をおろそかにすると誤報に悩まされることになります。
この赤外線センサーは、基本的に外部からの侵入を検知することが第一の目的ですが、実はベトナムでは、もう少し違った使われ方もします。
本コラムの3回目(工業団地内で発生する事件例)で、ベトナムの工場は「宝の山」のような場所で、工場内の資材や製品などがよく盗まれるという話をしました。悪意を持ったワーカーや出入の業者・警備員などは、隙を見てはフェンス越しに「お宝」を外に放り投げます。そして、外に待機している仲間たちが回収したり、自分自身が退勤後に回収したりします。外に放り投げるにはフェンスに近づかなければいけません。そこで、フェンスの内側から離した場所にセンサーを設置することで、悪意を持った人間をフェンスに近づけないようにするという工夫をします。
写真3(センサーがフェンスから離れている)
赤外線センサーは、第一警戒線や第二警戒線のような屋外で使用されることがほとんどで、第3警戒線(建屋の中)ではあまり使われません。よくミッション・インポッシブル系の映画などで、赤外線が張り巡らされた金庫室の中を、特殊なメガネを装着して、アクロバティックに潜り抜けるシーンがありますが、実は演出上の話で、現実にはありません。
では、部屋の中を守るには、どのようなセンサーを使うのでしょうか?
空間センサー
空間センサーには、さまざまな形のものがあり、写真4のようなものや、円形のドーム型のようなものもあります。
写真4
これらは、もとの正式名称の中に「受動赤外線検知」とあるように、「赤外線を受ける」機能を持っています。上述の赤外線センサーは、「赤外線を発射する」機能を持っていましたので、つまり反対の動きをするということです。
この世に存在するすべての物体からは赤外線が放射されています。部屋の床、壁、家具などからも赤外線が放射されています。
空間センサーの動作原理は、検出している部屋の背景温度(下図a)と、侵入者の表面温度(下図b)の差を検出して信号に変えます。
空間センサーが、赤外線を受けている範囲に、人が侵入すると、それまでの背景物体(図aの壁)から放射されている赤外線が侵入者で遮光され、代わりに人の表面から放射されている赤外線を受けます。壁の表面温度と人体の表面温度の違いを検知して警報を出力するのです。
しかし、温度差だけでは、空気口からの外気吹き込みやFAXからの紙出力、小動物などでも警報が出てしまいます。そこで、最近の空間センサーでは、物体の大きさや移動の速度も感知して、検知精度を上げるような工夫がなされています。つまり、ネズミなどの小動物が移動する速さではなく、侵入者が忍び歩く程度の速さで一番感度が高くなるように、設定されています。また、上述の内容だけではなく、各メーカー独自の検出アルゴリズムで検知精度を高める工夫が空間センサーには施されています。
このように、空間センサーは何かを放射して侵入者を見つけるのではありません。自然に放射されている赤外線の温度差を検出するのです。映画で描写されるようなシーンが現実的でないことが、改めてご理解いただけたのではないでしょうか?
次回は、第二警戒線や第三警戒線で使用され、人の動きをコントロールする「出入管理システム」について説明します。
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