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[第5回] 日本企業のベトナムへの進出形態 ?M&A?
2014年12月9日
今回は会社設立や駐在員事務所の設立のように、自身で新規立上げとは別の方法である、M&Aについて詳しく見て行きたいと思います。
新規立上げとM&Aを比較して、メリット・デメリットを以下に簡単にまとめてみました。以下の点については、日本もベトナムも共通していることだと思います。
【メリット】
・新規立上げで新規サービスや商圏を構築していくのに比べ、M&Aは時間・コスト面でリスクを一般的に低く抑えられる。
【デメリット】
・既存企業の買収のため、隠れ債務や訴訟リスク等、想定外のリスクを背負う可能性がある。
ただ、ここベトナムにおいては、日本国内のM&Aと異なる点も多いです。まず、ベトナムのM&Aで気をつけるべき点は投資許可証の問題です。ベトナムでは法律が不透明なため、外資が1%でも持分を取得すると、外資企業とみなされる可能性があります。そのため、外国人がベトナム法人に投資をする結果、投資後のベトナム法人は外資企業とみなされ、投資許可証の取得や変更が必要になります。
また、M&Aをしっかり完了させる為には、投資許可証の要件や投資スキームを事前に確認しておくことも非常に重要です。
上記のように、投資許可証の取得可否が不透明、取得期間が長期に渡るといったリスクがある場合でも、早く投資をしたいといった場合に、融資により先にイニシアティブを取り、その後投資許可証の取得とともに資本金に振り替えるといったスキームを取るようなケースを見たことがあります。
それ以外にも、既にベトナムにある外資企業が取得困難な投資許可証を持っており、その投資許可証を取得する目的でM&Aをするケースもあります。
ベトナムにおいては、社内管理体制・法律の整備・運用具合、ビジネス慣習、全てにおいて日本と比較して不透明でリスクが大きいです。そのために日本以上にDD(デュー・デリジェンス。M&Aにおける財務・税務・法務等の調査)が重要になります。また、DDをしても、リスクが全てクリアになるわけではありませんので、その後の譲渡契約の中でDDで判明したリスクに対してどう対処するのかも非常に重要になってきます。
ベトナム企業をM&Aをした後に、過去の外国人株主からの出向者が個人所得税の税務申告を適正にしていなかったために、買収後に多額の税金を払わざるを得なかったというケースも見たことがあります。
他にも、日本人がベトナム企業、ベトナム人を経営することは基本的には困難なケースがほとんどだと思いますので、良いベトナム人経営者をパートナーとして見つけられるかどうかが重要です。ただ、それもなかなか難しく、途中でベトナム人パートナーが約束を守らなかったため、日系企業が予定よりも投資を多くせざるを得なかったケースもあります。
以上のように、ベトナムでM&Aをすることは、日本でM&Aをする場合と比べ、はるかにリスクが大きいです。その点を深慮して、M&Aを計画・実行する必要があります。
最後に、参考のため、日系企業がベトナムでM&Aをしたケースを以下に幾つか挙げます。
日系企業 | 投資先 | 業種 | 出資比率 |
---|---|---|---|
キリンホールディングス | Interfood | 飲料 | マジョリティ |
日本ハム | Golden Pig | 食品 | マジョリティ |
サントリー | PepsiCo | 飲料 | マジョリティ |
エン・ジャパン | Navigos Group | 人材 | マジョリティ |
三井住友銀行 | Eximbank | 銀行 | マイノリティ |
三菱東京UFJ銀行 | Vietinbank | 銀行 | マイノリティ |
兼松 | Dalat Milk | 乳業 | マイノリティ |
上記は2014年11月30日現在の状況で、ベトナム国では法律の改正が早く、また法律の整備・運用が不明瞭で、グレーな部分が非常に多いです。実際のM&A検討時には、コンサルティング会社や会計事務所、弁護士事務所等、専門家に相談することをお勧めします。
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※コラム内容は、株式会社エスネットワークス出版の「ベトナム事業運営マニュアル」より一部抜粋。
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