出産
日本で出産しないとなると、選択肢は、ハノイ、ホーチミン市で外国人を受け入れている総合病院での出産、ベトナム人が利用する産婦人科専門病院での出産、あるいはベトナム近隣国、シンガポール、バンコクの病院での出産のいずれかを選択することになります。ベトナム国内での出産の場合、出産に立ち会う医師や看護婦はどちらの場合も外国人医師かベトナム現地のスタッフとなります。近隣国、特にバンコクでは日本人対応が行き届いてきており、かなり安心して出産に望める体制が整っているといえます。ベトナムで外国人向け総合病院を選択した場合、設備や日本語サービスの優遇を受けられる分、料金は高くなります。
出産様式では、帝王切開に踏み切る確率が高い点などに日本との違いがあります。
ベトナムの病院での出産
国が変わると、文化や制度の違いに伴って出産も異なります。日本人が出産できる病院は外国人を受け入れているフランス系総合病院とベトナムの産婦人科専門病院に分かれます。いずれも医療スタッフは外国人医師かベトナム人医師や助産婦であることは共通です。外国人を受け入れている病院ですと、コミュニケーションの手段は英語かベトナム語となり、日本語はベトナム人の日本語通訳を介して可能です。一般のベトナム人が利用する産婦人科専門病院では、100%ベトナム語の対応となり、英語も日本語もまったくといっていいほど通じません。
最近では、ベトナム人男性と結婚された日本人女性や日本人女性でご主人が駐在中にベトナムの産婦人科専門病院で出産するケースもみられます。ベトナム語が堪能で現地事情にあらゆる面で慣れ親しんでいる方が、この選択肢を選ばれる場合が多いようです。現地医療機関の大変混雑した状況や、診察室や検査室でのプライバシーが保たれない状況をすんなり受け入れて出産に望むのには、やはりかなりの勇気と忍耐力を要するといえます。
外国人を受け入れている総合病院の産婦人科には、先進国並みの医療施設が備えられており、一定水準の医療サービスを受けられます。また、日本人を含む外国人がよく利用する外資系クリニックでは、パパとママが一緒に参加できる母親・父親学級や産後ケア、母乳育児、新生児のケアの仕方などの指導を行なっているところもあります。
多くの妊婦の方がベトナムでの出産を考える理由は、ご主人と出産を共感できる、出産費用等の経済的理由、異国での出産を体験してみたい、といった冒険心からでしょうか。近年では、ベトナムで出産される日本人の方もおられるようです。しかし、大切な、しかも、ともすると危険を伴なう出産にかかわることですから、無理をしないでご自分やご家族が一番納得のいく環境での出産を検討しましょう。
日数
入院期間は一般に日本の半分以下、自然分娩で3 ? 4 日、帝王切開で4 ? 7 日といったところです。FV病院では自然分娩の場合、出産後4泊のパックとなっており入院期間は日本とほぼ変わらないか、1?2日短いだけといっていいと思います。帝王切開でもやはり日本より2?3日は短いようです。
費用
普通分娩パッケージ(4泊5日の入院費含む、2人部屋) | 18.700.000VND |
---|---|
普通分娩パッケージ(4泊5日の入院費含む、1人部屋) | 20.200.000VND |
普通分娩パッケージ(4泊5日の入院費含む、1人部屋,デラックス) | 30.000.000VND |
普通分娩パッケージ(4泊5日の入院費含む、1人部屋,デラックス) | 37.500.000VND |
硬膜外麻酔による分娩パッケージ(4泊5日の入院費を含む、2人部屋?VIP) | 20.400.000VND? 39.000.000VND |
帝王切開パッケージ(4泊5日の入院費を含む、2人部屋?VIP)、全身麻酔 | 23.100.000VND? 49.000.000VND |
帝王切開パッケージ(4泊5日の入院費を含む、2人部屋?VIP)、無痛分娩 | 21.7000.000VND? 45.000.000VND |
普通分娩パッケージ(4泊5日の入院費含む、2人部屋) | 20.000.000VND? |
---|---|
帝王切開パッケージ(5泊6日の入院費含む、2人部屋) | 26.000.000VND? |
普通分娩、帝王切開 | USD1.500? |
---|
(2011年9月現在)
ベトナム出産体験記
寺川瑠奈小児科医
ファミリーメディカルプラクティス・ホーチミン
ベトナムで妊娠中の方は、「どこで出産しよう?」と悩まれることも多いのではないでしょうか?私達もそうでした。選択肢は、?日本?ベトナム?タイやシンガポール、の3つ。
?は安心ですが、昨今の産婦人科事情だと早めの予約が必要ですし、臨月近くに上の子を連れてのフライトがあります。
?は楽ですが、万が一出産時に重大な合併症が起こった場合、やや心配です。
?はサービス・医療レベルの面でも安心ですが、見知らぬ土地で2ヶ月間弱、上の子と過ごすことになります。また当然赤ちゃんのパスポートをとる必要があるので、産後の体でできるかな・・・と少し不安でした。
立会い出産をしたいこと、上の子の生活リズムをなるべく変えないこと等を考えた末、私達は?の選択をしました。義両親が来てくれてフランス系総合病院で無痛分娩をし、結果としては大満足!最初は不安でしたが、スタッフは手技が上手だし英語も話せ、途中からは安心していました。すべての人にお勧めはしませんが、妊娠中にお母さんも赤ちゃんも健康であれば、ベトナムでの出産も選択肢の一つに考えることは可能と思います(重篤な状態になったり、予定日よりあまりに早く生まれてしまう場合は他国へ搬送する必要があります)。
妊娠・出産は大きな出来事ですし、時には命に関わる事態が起こり得ることです。よく話し合って、そのご家庭にとってベストの選択をされることをお祈りしています!
ベトナムでの入院、出産の注意点
ベトナム人妊婦は帝王切開を望む割合が多いようですが、どのような分娩方法を望んでいるかは、事前に主治医としっかり確認しましょう。
ベトナムの医療では患者さんへの説明が少ないこともあり、医療スタッフ主導で医療行為が進んでいくこともしばしばあるので、誤解や不安を残すことになりかねません。さらに、日本人は言葉の不自由さや、その場ですぐ聞き直さない風習も手伝って、十分な理解や納得が得られないまま、わだかまりを残すことにもつながる場合があります。特に初産婦にとって海外での出産・育児は適切な指導が得られないと不安をかかえたりトラブルを生じたりすることがありますから、先輩ママたちからアドバイスを得たり、日本から応援に来てもらうのも一つの手段でしょう。
新生児チェックと予防接種
結核やB型肝炎の多いベトナムでは出産直後から、新生児に結核予防接種BCGおよび B型肝炎の予防接種(母親がB 型肝炎のキャリアの場合)を開始します。新生児への予防接種スケジュールは、日本と諸外国では多少異なります。
小児科専門医と予防接種のアドバイスを含めた定期新生児チェックを受けられることをお勧めします。日本語が通じない医療機関では、事前の説明がない場合がありますので、十分確認するようにしましょう。