損害保険

ベトナムにおける損害保険

1976年のベトナム統一後、それまで南ベトナムに所在していた外資系損害保険会社を含む50社は全て解体され、政府財政省管下の1社に吸収合併されました。

その後、94年までは1社独占体制が継続しましたが95年にベトナム政府は国内保険市場に競争原理を導入するため、上記1社を分割するかたちで新たに2社を設立しました。

その後も外資の合弁会社、100%現地法人が順次設立されるなど開放が進んできており、現在では合計29社(2011年7月現在社が営業を行っています。

近年の損害保険市場は、対前年成長率で20?25%程度の目覚しい発展を続けていますが、これらはベトナム経済の発展と人々や社会の成長に伴って、損害保険へのニーズが拡大してきていることを示しています。

当国における損害保険の販売形態は保険会社による直接販売が主流ですが、代理店やブローカーを通じての販売は今後増加していくことが想定されます。また、自動車ディーラーや金融機関を通じた販売も行われており、こうした仕組みを通じて、今後一層損害保険が社会に浸透していくことが考えられます。

しかしながら、ベトナムの一般国民にとって損害保険はまだ身近なものではなく、今後より安全で安心できる生活を実現するためのツール、としての役割を理解してもらえるよう、政府や関係団体による啓蒙活動が必要と思われます。一般国民への損害保険の浸透に先行して、企業分野では既に普及は始まっていますが、制度等未整備または改善すべきところも多々見受けられ、今後の業界の課題と言えます。

特記事項としては2007年に政府から、世界でも例を見ない強制火災保険制度に関わる通達と決定が発行されました。火災及び爆発危険に関する基準から指定される該当業種の事業主は、予め決められた一定の条件に基づいて、強制火災保険を付保する義務が生じることになりました。詳細については保険会社にお問い合わせ下さい。

各種損害保険

以下にベトナムで提供されている損害保険の一例を紹介いたします。詳細については保険会社にお問い合わせ下さい。

1. 火災総合保険

企業の所有する建物や機械設備等を対象としたもの、及び個人の持ち込み家財を対象としたものなど各種アレンジ・手配が可能です。

?保険の対象:建物・機械・什器・備品・原材料・仕掛品・商品など

?補償内容:火災、落雷、爆発、地震、暴風、洪水、破裂、ストライキ、騒じょう等に起因する損害

?免責:戦争や保険の目的の固有の欠陥によって直接または間接的に生じた損害など※電力供給が安定していないベトナムにおいて発生しやすい電気的、機械的事故は火災保険では補償されません。別途「機械保険」を手配いただく必要がございます。

2. 労災保険

ベトナムでは、法律上労災保険の強制付保の規定はありませんが、労働法で労災事故に対する雇用主による補償が義務付けられているため、多くの日系を含む外資系企業では本保険に加入しています。

? 保険の対象者:ベトナム国内の企業・官公庁等で働く従業員

?補償内容:勤務中並びに通勤途上の労働災害により死亡・後遺障害及び傷害が発生した場合、休業中の補償に対して保険金が支払われます。労働法に規定されている一名あたり/月収の30ヶ月分が最低補償額の目安となっています。

3. 自動車保険

日本と同等の補償項目が得られるものの、バイクを中心に未付保の車両が多数存在しており、万が一事故が起きた場合に、相手からの補償は期待できないと考えていた方が良さそうです。

従って、強制保険である下記?対人・対物賠償責任保険に加え、?車両保険と?搭乗者傷害保険についても加入を検討されることをお薦めします。

また、近年、会社等で自動車を所有せず、リース・レンタルで車両(及び運転手)を利用される企業も多くなっていますが、そういう場合も貸主がどういう保険を手配しているか、内容を確認されることをお薦めします。

?対人・対物賠償責任保険(強制保険)

1)対象車種:50cc以下の原動機付自転車を除くベトナム国内で使用される全ての自動車。

2)補償内容:対象となる自動車の所有・使用・管理に起因して第三者の生命・身体をまたはその財物に損害を与えることによって生じた法律上の賠償責任を以下の額を限度に補償します。

対人賠償:VND 50,000,000(1名/1事故あたり)

対物賠償:VND 50,000,000(1名/1事故あたり)

?対人・対物賠償責任保険(任意保険)補償内容:対象となる自動車の所有・使用・管理に起因して第三者の生命・身体をまたはその財物に損害を与えることによって生じた法律上の賠償責任のうち、強制保険で支払われる金額を超過した部分に対して下記の保険金を上限に担保します。

?搭乗者傷害保険対象自動車の搭乗者が交通事故により死亡・後遺障害または傷害を被った場合に補償します。

?車両保険交通事故、火災、洪水、落雷、盗難などで対象となる車両に損害が生じた場合の補償です。

4. 賠償責任保険

工場、事務所、住居等の所有・使用・管理に起因して生じた偶然な事故等により、第三者の身体または財物に損害を与え、かつそれにより法律上の損害賠償責任を負ったことで発生した損害を補償します。特に、住居を賃貸している場合には家主や他の入居者への損害賠償が発生することがありますので、お忘れなく検討されることをお薦めします。

また、製造した製品の欠陥が原因で第三者の身体または財物に損害を与え、かつそれにより法律上の損害賠償責任を負った場合の損害を補償する生産物賠償責任保険の検討もお勧めします。

5. 貨物保険

輸送中、輸送途上の保管中に、貨物に発生した事故を補償します。輸入・輸出貨物(保険の必要性については販売取引条件によって異なります)、国内輸送貨物が対象となります。

6. 傷害・医療保険

怪我や病気による損害を補償する保険ですが、日本人駐在員等は日本で販売されている海外旅行傷害保険に事前にご加入されることが多いようです。ベトナム国内では、日本で加入可能な商品と内容は異なりますが、同様のものを販売している保険会社があります。

7. 工事に関する保険

工場・施設等の建設工事・機械設備の搬入・据付等に伴い発生した物的損害及び工事に起因する第三者への法律上の賠償責任を補償します。工事請負業者または発注者いずれかによる手配となりますので、事前に両者間での調整が必要です。

上記以外にも利益保険、機械保険、盗難保険、現金盗難保険、動産総合保険などさまざまな種類の保険がベトナムでも手配可能です。事業の形態や環境によって必要となる保険は大きく異なりますので、保険会社に個別に相談されることをお薦めします。

事故に遭われたら

基本的には日本と同様です。交通事故や盗難事故、火災事故であれば、まずは警察や消防への届出が必要です。常日頃から社内やご家庭で緊急連絡先リストを整備し、何か起きたときに皆さまに代わってこれら関係先とのやり取りやその後の対応を任せられるスタッフや知人を確保しておくことが重要です。また、保険会社への通知(連絡)も遅滞なく行っていただくことが必要になりますので、その点も是非ご留意下さい。

事故現場での安易な、または拙速な判断に基づく行動は後で問題を大きくすることもあり得ます。是非、信頼の置ける関係者、そして保険会社との連携・意思疎通を心がけることをお薦めします。

公的保険制度

ご参考までに、ベトナムで政府が実施している公的な保険についても簡単に説明します。

1. 社会保険

外資系企業は毎月の従業員の全給与の15%を社会保険料として留保することが義務づけられています。その内10%は年金・弔慰金制度実施のために充当し、残り5%は疾病休暇手当、出産手当及び労災・職業病手当に充当されます。また、従業員も毎月自らの給与の5%を地方社会保険基金に支払うことが義務づけられており、年金・弔慰金制度実施に充当されます。

2. 健康保険

当国には強制及び任意の健康保険制度があり、制度改訂を経て多くの国民が強制加入の対象となっているものの、実際にはその進捗は思わしくなく、全体で5割未満しか加入していないとも言われています。また、同制度を利用するには、指定病院での医療を受ける必要がありますが、混雑している、保険に基づく適切な医療サービスが受けられない、などの問題点があるようです。

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