医療事情
ベトナムの医療事情
ベトナムの医療事情は年々改善が見られており、医療水準も上がってきてます。かつては盲腸手術すらもできないと言われていましたが、今はたいていの手術や治療はベトナムで行うことができます。都市部には外資系、日系クリニックもありその診療レベルは日本と変わりません。外資系クリニックでは胃カメラや大腸カメラを完備しているところもあり、日本内視鏡学界専門医による日本と変わらない内視鏡検査を受けられます。
64列CTスキャン、マンモグラフィなどを導入しているクリニックもあり、精密な検査をワンストップ・サービスで受けることができます。ただ、集中治療、新生児治療、高度先進医療などはまだまだな部分があります。ですから本当に重症な病気や怪我の場合はバンコクやシンガポールなどへ緊急搬送されているのが実情です。
かかりやすい病気とその予防
衛生状態の異なる環境で日本と同様の生活をしていると、様々な病気にかかるおそれがあります。うがいや手洗いをこまめに行い、十分な睡眠時間を確保するだけでも、多くの病気を防ぐことが可能です。何かとリスクの高い海外生活ですので、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病、日本脳炎などの予防接種は受けておいた方が無難でしょう。
予防接種を要する病気
ベトナムでの生活において必要となる予防接種はA型肝炎・B型肝炎・破傷風・日本脳炎・狂犬病、腸チフス、小児においてはさらに髄膜炎菌、肺炎球菌、ロタウイルスの予防接種などがあります。
外資系のクリニックなどで予防接種が受けられますが、基本的に、外資系は主に輸入ワクチンを使用し、ベトナムの病院では主に国産のワクチンを使用するため、料金はかなり異なります。また、外資系のクリニック、病院では接種前の診察料や医師、看護師による注射料をとるところがありますのでご注意ください。
予防接種 (外資系病院各1回料金) |
接種回数 | |
---|---|---|
A型肝炎 | 50?68.72US$ | 3回 |
B型肝炎 | 20?28US$? | 3回 |
日本脳炎 | 38US$? | 3回 |
狂犬病 | 37US$? | 3回 |
破傷風 | 28.59US$ | 1回 |
腸チフス | 20US$ | 1回 |
A型肝炎 Hepatitis A
症状
感染後2?6週間の潜伏期の後に発熱、全身倦怠感、食欲低下、褐色尿、眼球結膜や皮膚の黄疸、上腹部痛などの症状が現れます。初期には風邪と間違えたり、また気づかないうちに治癒する場合もあります。
感染経路
A型肝炎ウイルスを経口的に摂取することによって感染します。A型肝炎感染者の糞便中に排出されたウイルスを摂取したり、汚染された貝類(牡蠣が多い)の生食を介して、感染します。そのため下水管理の不備な地域、衛生管理の行き届かない施設などで流行が認められることがあります。
治療法
特効薬はなく、安静治療が第一です。通常は2ヶ月程で99%以上は完治し、慢性化への移行も見られませんが、まれに(0.1%)劇症肝炎に発展することがあり、症状の重い場合は入院治療が勧められます。
B型肝炎 Hepatitis B
症状
急性肝炎では6?23週間の潜伏期の後、発熱、全身倦怠感、食欲低下、黄疸、褐色尿、、上腹部痛などがみられます。A型肝炎とは異なり5?10%が慢性肝炎へ移行します。この場合、肝硬変、肝癌のリスクが高くなります。乳幼児期に感染した場合に無症状のままキャリアとなり慢性肝炎に移行することが問題となります。
感染経路
血液・尿・精液等を含む体液からウイルスが感染するため家族内感染・母子感染・性交感染・院内感染(輸血・注射針)などが主な感染経路となります。ベトナムでは人口の10-15%がB 型肝炎に感染しているといわれています(日本では1%程度)、そのため日本よりも感染する可能性は高いと言えます。
治療法
急性肝炎の治療はA 型肝炎と同じですが、慢性肝炎やキャリアについてはインターフェロンやリバビリンといった抗ウイルス治療を行うことができます。
予防法
一番確実なのはワクチン接種です。ベトナムでは出生時からB型肝炎ワクチン接種が施行されています。多くの先進国でも乳幼児ワクチンの定期接種項目の一つに指定されています。
狂犬病 Rabies
症状
犬に咬まれてから発症までの潜伏期間は1?2ヶ月といわれています。発熱、頭痛、嘔吐、咬まれた場所の痛みをはじめ、幻覚、多動興奮、痙攣、水を恐れる症状などの症状が進行し最終的には昏睡に陥りほぼ100%死に至ります。
2008年は91人、2009年は64人の方が狂犬病で亡くなっています。
感染経路
狂犬病ウイルスに感染している犬や猫に咬まれたり、ひっかかれたりして感染します。(唾液から感染します。) こうもり、きつね、スカンクなども感染源になり得ます。咬まれた部位から、ウイルスが神経に侵入し中枢神経に入ります。
治療法
発症してからでは治療が困難なため、咬まれた場合は、傷口を石鹸などで十分洗浄し、すぐに医療機関を受診してください。狂犬病免疫グロブリンの注射および狂犬病ワクチン接種(計5回)を開始します。これにより発病を防ぐことができます。
予防法
ベトナムでは犬を放して散歩させている光景をよく見かけますが、犬の狂犬病ワクチン接種率は不明です。万が一咬まれた後のリスクを考慮すると、不活化狂犬病ワクチン接種を受けておくことをお勧めします。