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[第3回]新規設立か買収か?
2014年11月14日
前回、日本の会社または個人(「日系投資家」)がベトナムでビジネスを始めるに当たり、法律上どのような方法があるのか、についてご説明しました。
法律上色々な方法が認められていますが、『会社の新規設立』と『既存の会社の買収』がポピュラーな方法です。
会社の新規設立とは、文字通り、新たに会社を設立する方法です。定款の作成、許認可の取得、オフィス(工場)の賃借、従業員の雇用、顧客の開拓、など、事業立ち上げのための準備を一から行うことになります。
他方、既存の会社の買収とは、既に事業を行っている会社(の株式)を購入する方法です。
両者には、それぞれ以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
会社の新規設立 |
?会社の形態・場所・規模などを柔軟に設計できる ?潜在的債務の無いきれいな会社でスタートできる |
?事業を軌道に乗せるまでに時間がかかる |
既存の会社の買収 | ?買収後、短期間で事業を軌道に乗せることができる |
?潜在的債務が存在する可能性 ?対象会社に対する調査や契約交渉などの初期費用 |
1 会社の新規設立
(1) メリット
まず、「設計の自由度が高い」というのが一つのメリットです。
例えば、製造業の場合、?独資にするのか合弁にするのか、?どこの省(市)のどの工業団地に入居するのか、?自社工場を建設するのかレンタルするのか、?資本金はいくらにするのか、?従業員を何人雇うのか、こういった事項を基本的に自分たちで決定することができます。
逆に、既存の会社を買収する場合は、こうはいきません。通常は、現存している工場を使用し、従業員を継続雇用していくことになるでしょう。
次に、「潜在的債務が無い」というのも重要なメリットです。
できたばかりの会社ですので、潜在的債務を負っておらず、「きれいな」会社でスタートすることができます。
この潜在的債務というのは、既存の会社の買収のデメリットでもありますので、その際に詳しくご説明します。
(2) デメリット
新規設立のデメリットは、やはり、事業が軌道に乗るまでに時間がかかるという点です。
製造業を例に挙げると、工場を建設し、設備を入れ、従業員を雇用し、顧客を開拓し、といった具合に一から準備をすることになります。
利益が出始めるまでに数年、累積赤字を解消できるまでに更に数年かかるケースもあるでしょう。
2 既存の会社の買収
(1) メリット
既存の会社の買収のメリットは、新規設立のデメリットの裏返しです。
既にベトナムで事業を継続している会社を買うわけですから、設備、人材、市場とのコネクションなど、事業に必要なものは一通り準備されています。
そのため、買収したその日から事業をスタートすることができます。
また、既に顧客その他の取引先がいるため、事業の収支についても具体的な予想を立てることができます。
(2) デメリット
まず、先ほど前振りをした「潜在的債務の存在する可能性」というのが、既存の会社の買収のデメリットの一つです。
既に一定期間事業を継続している会社ですから、過去または現在において、どんな法令違反やトラブルを抱えているかわかりません。
例えば、顧客との間で訴訟などの紛争を抱えているかもしれません。環境汚染を行っていれば、将来、多額の補償問題が発生するかもしれません。税金の滞納などがあれば、将来、多額の追徴課税が発生するかもしれません。
このように、既存の会社を買収する場合、買収後に債務が顕在化するリスクがあるのです。
次に、初期費用がかかるというのもデメリットの一つです。
今ご説明したとおり、既存の会社は様々な問題を抱えている可能性があります。
そこで、買収する前に、その会社がどのような問題を抱えているのかを把握し、問題を解消するため、詳細な調査を行わなければなりません。
これを、デュー・ディリジェンス(「DD」)といいます。DDは、法務DD、税務DD、会計DD、ビジネスDDといった具合に、様々な角度からそれぞれの分野の専門家が担当します。このDDについては、トータルで数千万円かかる場合もあります。
また、DDの結果を踏まえ、買収のための契約書(「株式売買契約書」)を作成しなくてはなりません。この契約書の作成や契約内容を巡る交渉についても、費用が発生します。
このように、既存の会社の買収には、多額の初期費用がかかるのが一般的です。
以上のように、「会社の新規設立」と「既存の会社の買収」には、それぞれメリットとデメリットがあります。これらを総合的に検討して、方法を選択する必要があるでしょう。
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