HOME > 専門家コラム > [第8回] ベトナムで会社を設立する ?合弁の留意点その1?
[第8回] ベトナムで会社を設立する ?合弁の留意点その1?
2015年5月15日
前回に続き、会社の支配権について見ていきます。
下図の持株比率に応じた留意点を、順にご説明します。
日本側の 持株比率 |
ベトナム側の 持株比率 |
支配権 |
---|---|---|
75%以上100%未満 | 25%未満 | ・日本側は単独で特別決議を通せる →日本側に完全な支配権あり |
65%以上75%未満 | 25%以上35%未満 | ・日本側は単独で普通決議を通せる ・日本側は単独で特別決議を通せない →ベトナム側に特別決議の拒否権あり |
35%以上65%未満 | 35%以上65%未満 | ・どちらも単独では、普通決議/特別決議を通せない |
25%以上35%未満 | 65%以上75%未満 | ・ベトナム側は単独で普通決議を通せる ・ベトナム側は単独で特別決議を通せない →日本側に特別決議の拒否権あり |
25%未満 | 75%以上100%未満 | ・ベトナム側は単独で特別決議を通せる →ベトナム側に完全な支配権あり |
1 日本側の持株比率が25%未満
ベトナム側単独で特別決議まで通すことができるため、何も手当をしない場合、日本側は当該合弁会社の経営に関与することができません。
日本側の意思を当該合弁会社の経営に反映させるためには、以下の手当をすると良いでしょう。
(1)重要事項に関する拒否権
増資・減資、合併等の組織再編、事業内容の変更・追加といった、当該合弁会社や株主にとって極めて重要な事項については、持株比率に関わらず拒否権を保持しておくことが有用です。
例えば...
「上記の重要事項については、日本側の承認が無ければ株主総会決議を通せない」という合意をしておくのです。
⇒これによって、日本側の意思を当該合弁会社の経営に反映することができ、日本側の権利を守ることができます。
(2)取締役の選任権
重要事項の決定は株主総会でなされますが、日々の業務は取締役会または法定代表者によって決定されます。
法定代表者は多数派株主から出されるのが一般的です。また、取締役の員数が3名の場合、25%未満の株式しか有しない日本側に選任権は無いのが原則です。
しかし、日本側が日々の経営に関与するためには、取締役を選任する権利を確保しておくことが有用です。
例えば...
「持株比率に関わらず、日本側は取締役1名を選任することができる」という合意をしておくのです。
⇒これによって、日本側の意思を当該合弁会社の経営に反映することができ、また、日々の業務を監視することもできます。
(3)プット・オプション
一定事由が発生した際に、自分の保有している株式を他の株主や会社に売りつける(買い取ってもらう)ことができる権利を『プット・オプション』といいます。
?プット・オプションを行使できる事由と?行使した際の買取価格の計算方法については、事前に合意しておきます。
例えば、「?日本側の経営判断とベトナム側の経営判断が一致せず、合弁会社の運営がスムーズに行かない場合や、合弁会社の財務状況が想定を大きく下回る場合に、プット・オプションを行使できる」、「?買取価格は、出資した際の金額と直近の純資産額の高い方」といった合意をしておくことが考えられます。
⇒これにより、仮に合弁事業がうまくいかない場合にも、最低限の逃げ道を確保しておくことができます。
以上の手当については、日本側とベトナム側との間の合弁契約および合弁会社の定款に規定しておくことが必要です。
次回「ベトナムで会社を設立する?合弁の留意点その2?」に続きます。
- お問い合わせはこちら
-
URL : http://vilaf.com.vn/ 電話番号 : +84-(0)28-3827-7300 (【VILAF】Vietnam International Law Firm) Email : ymm@amt-law.com