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[第10回] ベトナムで会社を設立する ?合弁の留意点その3?
2016年7月4日
前回に続き、ベトナムで合弁会社を設立する際の留意点について見ていきます。
前回は、下図の中で「日本側の持株比率が25%超35%以下」の場合についてご説明しましたが、今回は、「日本側の持株比率が35%超65%未満」の場合についてご説明します。
日本側の 持株比率 |
ベトナム側の 持株比率 |
支配権 |
---|---|---|
75%以上100%未満 | 25%以下 | ・日本側は単独で特別決議を通せる →日本側に完全な支配権あり |
65%以上75%未満 | 25%超35%以下 | ・日本側は単独で普通決議を通せる ・日本側は単独で特別決議を通せない →ベトナム側に特別決議の拒否権あり |
35%超65%未満 | 35%超65%未満 | ・どちらも単独では、普通決議/特別決議を通せない |
25%超35%以下 | 65%以上75%未満 | ・ベトナム側は単独で普通決議を通せる ・ベトナム側は単独で特別決議を通せない →日本側に特別決議の拒否権あり |
25%以下 | 75%以上100%未満 | ・ベトナム側は単独で特別決議を通せる →ベトナム側に完全な支配権あり |
3 日本側の持株比率が35%超65%未満
有限会社については、定款で特別の定めをしない限り、社員総会の普通決議を通すためには、65%の賛成が必要です。
日本側の持株比率が35%超65%未満の場合、ベトナム側の持株比率も35%超65%未満となるため、いずれも単独で65%に届きません。
つまり、単独では普通決議を通すことができないため、両者の合意で決めなければなりません。
しかし、両者の間で意見が割れ、合意に至らない場合も考えられます。
この、両者が合意できず、決めることができない状態を「デッドロック」と言います。
一つ例を見てみましょう。
ある合弁会社の資金繰りが厳しく、すぐにでも資金調達しなければならないとします。
日本側は増資をしたい(借入はしたくない)ですが、ベトナム側は多額の銀行借入をして乗り切りたい(増資をしたくない)、と考えています。
「増資」も「多額の銀行借入」も社員総会決議で決めるべき事項です。どうなるでしょうか?
日本側は単独では社員総会決議を通せませんので、ベトナム側の賛成が無い限り、「増資」の決定をすることができません。
ベトナム側も単独では社員総会決議を通せませんので、日本側の賛成が無い限り、「多額の銀行借入」の決定をすることができません。
結果として、合弁会社は資金調達をすることができません。
これがデッドロックです。
それでは、デッドロックになった場合、どうすれば良いでしょうか?
話合いで解決することはできません(話合いで解決できなかった場合をデッドロックというからです)。
結論としては、事前に、合弁契約にデッドロックの解消方法を規定しておかなければなりません。
デッドロックの解消方法については、次回ご説明します。
次回「ベトナムで会社を設立する?合弁の留意点その4?」に続きます。